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温泉道 山の宿 新明間 後藤哲也

何度も訪れたい、"第二のふるさと"黒川温泉という"宿"へ育てる

黒川温泉は、今や日本随一と称される人気の温泉郷だ。
その背景には、黒川に生き、黒川を愛する人の人生がある。
誰も知らない温泉地を、思い一つで育ててきた
「山の宿 新明館」の後藤哲也さんは、今日も穏やかにお客様に声を掛ける。
通りを歩くと、そこに住む人々の笑顔があり、どこにもない自然があった。
秘境の温泉地は、どこよりも心地よい温もりにあふれている。

そこは、地図にもないさびれた温泉地だった

 私が新明館で働き始めたのは、昭和20年ごろ。湯治場として利用されるほど泉質は良いのに、誰も知らない、地図にさえ載っていないようなさびれた温泉地だったんですよ。この上質な温泉をもっと多くの人に浸かってもらい、喜んでいただきたい。「黒川に行きたい」「黒川に行ってよかった」と、思ってもらいたいと、そればかりを考えていました。そこで、日本全国の温泉地を訪ね歩いたんです。人気のあるところも、ないところも、私にとって勉強でしたね。
 そして気付いたことは、黒川には個性がない。にぎわう温泉地には街全体に統一感があり、その個性を表す景観があるんです。「そこに行きたい」と思わせるような“黒川の景観”をつくろうと思い立ちました。
 とは言え、当時の黒川は「自分の宿さえ集客できれば、それでいい」という考えがほとんどで、誰も景観づくりに耳を貸す人はありません。まずは新明館で結果を出すしかない。そこで、自分なりに出来ることから始めようと、宿の裏手にあった岩をノミと金づちで掘って、洞窟風呂を造ったんですよ。当時は一輪車さえない時代でね、岩を“しょうけ”(竹などで編んだカゴ)に積んで、日に何度も担いで運び出す。きつかったですよ、でも負けられない。黒川をどこにも負けない温泉地にしたいという夢がありましたから、止めようと思ったことは一度もありません。10年ほどかかって、ようやく洞窟風呂が完成したときは、もう言葉も出ませんでしたね。

永く愛され続ける"ふるさと"をつくる

 一方で、景観の大きな柱になる植樹にも力を入れました。木を植えると言えば、日本庭園を想像する人も多いんですが、自然の木立そのままの庭を造ったんです。この山奥にわざわざ足を運んでくださるお客様が求めているのは、“自然の癒やし”。黒川らしい田舎ぶりを大切にした景観にすることが、大切なんですよ。よその温泉地に行けば有名なデザイナーが手がけた所などもありますが、人が温泉地に望むものは“珍しさ”ではないと思うんです。新しいうちは興味を引きますが、ただ「珍しい」「面白い」だけでは、いつか飽きられる。永く愛されるためには、「何度も訪れたい」と思っていただけるような、落ち着きのある癒やしの場所でなくてはならないと思っています。
 やがて口コミでお客様がたくさん来てくださるようになると、温泉全体の意識も変わっていきました。若手経営者たちが相談に訪れるようになり、ようやく黒川温泉として街全体の景観づくりがスタートできたんです。

街全体を、ひとつの"宿"に

 忘れてならないのは、おもてなしの心。帰るお客様が「黒川に来てよかった」と思っていただくのは当たり前。黒川の地に立った時に、「ここへ来てよかった」と思っていただくことが大切なんですよ。お迎えするおもてなしの心もまた、景観に表れるんじゃないでしょうか。そのためにも、黒川ならではの趣きある景観を保ち続けていく努力は、惜しみません。
 私たちの原動力は、お客様の笑顔。喜んでいただき、「次は、あの宿に泊まってみたい」と思っていただければ、また黒川へ足を運んでいただける。どこの宿に泊まろうと、“黒川温泉のお客様”なんです。
 今では、こうして全国や海外からお客様をお迎えできる温泉地になりました。それも一人、また一人と私の景観づくりに賛同して、黒川の皆が心を一つにして歩いてきたからです。そして、ようやく私たちは“黒川温泉”という一つの“宿”になった。これからもお客様の期待に応え、“癒やされる田舎の温泉地”として、皆さまを温かくお迎えしたいですね。

一人黙々と景観づくりに取り組んだころ、周囲の理解を得られなかったと語る後藤さん。「まち一番の嫌われ者やったよ」と笑う。
Profile
後藤 哲也 Tetsuya GOTO
「山の宿 新明館」代表取締役。黒川温泉復興の功績を認められ、観光庁より「癒やし空間演出のカリスマ」として選定を受ける。全国各地から講演会などの依頼も多数。最近は田畑の手入れに精を出し、隠居生活を楽しんでいるという。79歳。
阿蘇くまもと空港までの路線|ひょいとFDA.com
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