多くの賢治作品の中でも代表作といえる「銀河鉄道の夜」。漁に出た父親の消息が分からないまま、病気の母の代わりとなって家計を支えるために学校に通いながら働くジョバンニと、幼い頃からの友人・カムパネルラの物語。ケンタウル祭りの夜、いじめられたジョバンニはひとりで夜空の星を見上げていた。「銀河ステーション、銀河ステーション」と声が聞こえたかと思った次の瞬間、すでにジョバンニは“銀河鉄道”に乗っていて、前にはカムパネルラがー。
物語の始まりに登場するジョバンニとカムパネルラが通う学校は、賢治自身が通っていた花城尋常小学校がモデルとなっている。現在は記念碑が立つのみ。
「川だといわれたり、乳の流れたあとだといわれたりしていたこのぼんやりとした白いものが本当は何かご承知ですか」と先生が尋ねるも、ジョバンニとカムパネルラは、恥ずかしさと自信のなさから答えることができなかった、冒頭のシーンもここが舞台。
ここがこの旅のスタート地点。ページをめくって、“銀河鉄道の夜”の旅に出発しよう。
「町を三つ曲がってある大きな活版所に入ってー」と登場する、ジョバンニが学校帰りに働いていた活版所。
小学校跡から緩やかな坂道を下って、交差点を三つ越えると現れる。現在は、建物はそのままに1階部分が「照井だんご店」となっている。後ほどの休憩の時のために、お団子をゲットしておこう。
時計店跡や電気会社跡の前を通りながら、坂道を上っていくと、大きな交差点にぶつかる。ここはジョバンニが、ザネリやカムパネルラたちと出会った交差点だ。
ここでザネリにからかわれたジョバンニは「牧場のうしろのゆるい丘」へ向かった。作品中には、はっきりと場所の名前は登場していないが、推測するに「花巻城」のこと。当時は、すぐ近くを鉄道が走っていたし、ゴロンと転がって夜空を見上げることができる草むらもある。
ジョバンニとカムパネルラが途中下車した停車場を再現。“銀河鉄道”のモデルといわれる、岩手軽便鉄道線路跡沿いにある。
ここで途中下車したジョバンニとカムパネルラが、プリオシン海岸(イギリス海岸)へ向かったように、住宅街の中の細い道を進み土手を越えると…イギリス海岸!
作品中には「プリオシン海岸」として登場。「川上の方を見ると、すすきのいっぱいにはえている崖の下に、白い岩がまるで運動場のように平らに川に沿ってでているのでしたー」と表現されている。
「岩の中に入っている百二十万年前のくるみの実がたくさんありましたー」とも書かれている通り、140万年前のものといわれるクルミの化石も採掘されている。地質学者でもあった賢治も何度も足を運んでいる、お気に入りの場所。ベンチに座って、お団子を食べながらちょっと休憩。
「プリオシン海岸」から川下の方に歩いた先にある「朝日橋」は、物語のクライマックスの場所。
川に落ちたザネリは、カムパネルラに助けられたが、カムパネルラ自身はそのまま見つからず…。ジョバンニは、そこに来ていたカムパネルラのお父さんとの会話から、もうすぐ航海に出ていた父が帰ってくることを知り、急いで母が待つ家ヘと駆け出したー。